株式会社ウーオ COO万力悠人氏が描く、水産業の未来と地域振興。水産流通をデジタル化して需給のバランス適正化に挑む。

株式会社ウーオ 専務取締役COO万力悠人氏 DX

株式会社ウーオのCOOを務める万力悠人氏は、水産業界の変革と地域振興の両立に挑むキーパーソンです。広島出身であり、東京からのUターン転職を経てウーオに参画した彼の歩みと、同社の成長戦略をご紹介します。

株式会社ウーオ 専務取締役COO万力悠人氏

「UUUO(ウーオ)」ってどんな会社?

インタビュアー:改めて「UUUO(ウーオ)」ってどんな会社?か教えてください

すべての町を、美しい港町に。

万力:はい。UUUO(ウーオ)は「すべての町を、美しい港町に。」をVISIONに掲げ、スマホでつながる水産市場「UUUO(呼び名:ウーオ)」の企画・開発・運営を行っています。全国どこにいても、いつでも美味しいお魚が食べられる。新鮮な魚が身近な存在になれば、水産業はもっと盛り上がり、産地にも還元される。そんな日常を当たり前にするために、UUUO(ウーオ)はテクノロジーの力で、日本の水産業に新しい流通をつくるチャレンジをしている会社です。水揚げ情報や漁獲情報を透明化し、流通の構造をシンプルにすることで、最適な需給バランスを生み出し、持続可能な水産業を目指しています。

インタビュアー:素敵なVISIONですね。

万力:“魚があまっているところ”“魚がたりていないところ”をなくし日本の魚の新しい流通をつくりたいと考えています。日本だけではなく世界中で魚が消費されている時代。限りある資源を未来へ残すためUUUO(ウーオ)は流通という観点から魚の未来をつくっていきます。


「UUUO(ウーオ)」の現在地

インタビュアー:御社は、2023年に東京支社を設立。経産省「J-Startup」選定企業として急成長を遂げているとのことですが、現在の御社の成長状況を教えてください。

株式会社ウーオ 専務取締役COO万力悠人氏

万力:UUUO(ウーオ)をご利用いただいている企業様(買い手)は、約1000社になりました。出品者様は全国200港以上から毎日出品があり、海に面する全ての都道府県で実績を持つことができました。今までは産直流通ばかりでしたが、大手荷受け会社と提携するようになって、例えば豊洲のような市場に集まる大量の商品も買えるようなったということでUUUO(ウーオ)の取扱量が2倍になり、1日最大50トンの出品を実現しています。

インタビュアー:SaaS型アプリ「atohama」を全国の市場で導入ということですが、BtoB水産マーケットプレイスのUUUO(ウーオ)と別のサービスですか?

万力:atohamaは荷受会社と仲卸会社の商いをDX化するものです。今までは紙やFAXでやりとりをしていましたが、これを電子化し効率を格段に向上させているもので、日本には荷受会社が150社程度あると言われていますが、すでに30社程度に導入済です。我々としてはこの先5年くらいを目途に全て荷受会社に導入していただきたいと考えています。

インタビュアー:こういったサービスを展開しているUUUO(ウーオ)の競合社ってあるのですか?

万力:特にatohamaに関しては競合といえるサービスは無く、水産業の一番中心の商いをスムーズにするという狙いがあります。産直サービスであるUUUO(ウーオ)に関しては水産事業社さんが自力でEコマースを展開し、B2Bにも対応するということになると、競合と言えなくは無いですが、現在のところあまり目立った競合というものは無いという認識です。

インタビュアー:いいところに目をつけたということですね

万力:実際のところ産地開拓もユーザー開拓もめちゃめちゃシンドイのです。卸とかバイヤーへ何かマーケティング施策が届く方法もないので、その分僕らもじわじわとしか浸透していかないという課題もありますけど、足で開拓している状況です。このシンドさを他社が追随してくるとは思えないですね。

それと、漁業は養殖以外基本的に「計画生産できない」ので、これも模倣が難しいポイントだと思います。養殖系は産直系Eコマースサイトでもあるのですが、僕らって毎日漁に行って獲れたものを処理するので、そういう意味では産直系Eコマースサイトもそこまではできないんですよね。

出品者側のUIには徹底的にこだわる

インタビュアー:その日獲れた魚を産地の事業社さんがUUUO(ウーオ)に掲載しないといけないと思いますが、これに関してハードルは無いのですか?

万力:そこがポイントで、産地の事業社さんが魚をUUUO(ウーオ)に写真を載せて販売金額を決定しないといけないため、「めんどくさいからしたくない」という声はもちろんあるのです。しかし、そこをいかにハードルを下げることができるか!が我々の出品戦略のひとつです。一度出品してしまえば、そのエリアで獲れる魚はほぼ一緒なので、「次はすぐ再出品できますよ」とご案内するなど、出品者さんの出品ハードルをできるだけ下げてUIを簡単にし操作性を向上させています。

インタビュアー:ECのプラットフォームというのは自社開発ですか?

万力:自社開発です。買い手は、スーパーもあれば個人事業主の飲食店もあります。カード決済と掛け売り両方に対応していますよ。

UUUO(ウーオ)の価値 水産業界の課題解決へのアプローチ

インタビュアー:UUUO(ウーオ)は「すべての町を、美味しい港町に。」をビジョンに掲げ、課題解決に挑んでいますね。下記のように整理できると思っています。

  1. アナログ取引のデジタル化

電話・FAX中心の非効率な取引をアプリ化。発注履歴共有や「出品コピー」機能で作業負担を軽減し、漁港関係者の労働環境も改善。

  1. 販路固定化と一極集中の緩和

都市部に魚が集まりすぎる課題を是正。地方の事業社や仲卸が全国へ販売できる仕組みを構築し、内陸の業者も新鮮な魚を仕入れ可能に。

  1. フードロス削減(微妙)

需給ミスマッチによる年間30万トンの廃棄を解消すべく「魚のムダ0プロジェクト」を推進。

  1. 情報の透明化

水揚げ日・漁法・鮮度などを明示することで取引の信頼性を向上。スーパーでの販売実績では、売上前年比24%増を達成。

  1. 地域と人材への貢献

広島を拠点に、UIJターン人材の受け入れやフルフレックス制度を導入。働きやすい環境を整え、若手人材が水産業界に参入しやすい仕組みを提供。

万力:一番は「水産流通をデジタル化して需給のバランス適正化」ということだと思っています。

水産事業社に利益を還元し水産業を持続可能にしたいと思っており、その結果、地域経済と食文化の両面で日本全体にメリットをもたらすと考えています。

これからの拡大ヴィジョン

インタビュアー:東京にも支社がありますね?他の地域への拡大予定は?

万力:日本で一番大きい市場が豊洲なので豊洲市場との連携強化、東日本販路開拓ということを目的に東京支社を2023年に置いていますが、大阪も、日本で2番目に大きい市場があるので、2025年10月に大阪支社を開設しました。大阪本場市場との連携強化、関西エリア販路開拓が目的となります。

広島で創業し、広島に本社はありますが、全国的な意義が強くなってきています。

広島へのUターン転職の価値

インタビュアー:大学時代を京都で過ごされ、クックパッドやLINEなど東京で活躍されていて正直なところ楽しかったのではないですか?

万力:楽しかったですよ。でも東京は「人が多いとか、ずっといるところではない」とは思っていましたし、広島が好きで、帰りたいな~という気持ちはありましたが、就職活動をしていた当時では広島には「わりとチャレンジングな会社」というか、「ベンチャー企業」は見つけられなかったですね。新卒の時に広島に戻ることを検討したときは「自分の自己実現に近寄れるかというとちょっとそこに収まりたくない」というのが本音でした。面白い会社に行きたいという想いがあってそれで結果的にクックパッドが、その当時の自分としてはマッチしたということです。

LINEに転職したころに結婚して、妻が高校の同級生で広島在住だったことや、子育てなどその先の人生を考えると自然とUターンしたいという想いが強くなりUUUO(ウーオ)に参画することを決断しました。

インタビュアー:県外に出て、Uターンしたことが価値だと思いますか?

万力:ずっと広島に居たとしたら今の自分では無かったので、様々な経験をしたうえで広島で働けることは自分の価値だと思います。

インタビュアー:万力さんのような形のUターン型が広島の若者のロールモデルになると広島は活性化すると思います。素敵だと思います。今日はありがとうございました。

インタビュアー

リージョングロースパートナーズ株式会社

Marketing Director 山口ユウジ (YAMAGUCHI Yuji)

上級ウエブ解析士

「地域にこそ正しいマーケティングを」モットーにインターネット広告、SNS運用サポート、CRMといったフルファネルでのマーケティング支援が専門。大手アパレル企業のMD職を経験した後、地元広島でもマーケティングの仕事ができることを求めて2003年(株)電通西日本入社。大手移動体通信のプロモーションを約10年担当し(株)電通や(株)電通デジタル・ネットワークスへの出向も経験した後、電通西日本のデジタルビジネス部門の黎明期を牽引。自らの知見が地域創生の一助になることを目指し2019年デジタルマーケティングイノベーションラボ(株)を創業。地元企業のEC支援やメディア企業のデジタルマーケティング強化の支援を行っている。趣味はカープ観戦、旅行。尊敬する人は小林一三翁。

コメント

タイトルとURLをコピーしました