【インタビュー】自然と伝統が育んだスリランカの食の魅力を日本へ

戦略


自然と伝統が育んだスリランカの食の魅力を日本へ。今回はスリランカ輸出開発庁(EDB)農産物輸出振興アドバイザーの藤岡美保子さんとGayanさんにお話を伺いました。

スリランカってどんな国?

<インタビュアー>まずスリランカとは、どのような国なのでしょうか?

藤岡氏
 スリランカは、インド洋に浮かぶ熱帯の島国です。インド南端から約30km、面積は北海道の約8割ほど。そこに約2,200万人が暮らしています。赤道に近い熱帯性気候ですが、中央高地には冷涼な気候も共存していて、ひとつの島の中に複数の気候帯があるのが特徴です。

 国名「スリランカ」はサンスクリット語で「光り輝く島」という意味。まさにその名の通り、自然も文化も歴史も、すべてが強い光を放っています。

Gayan
 私はいつも、スリランカを「宝石箱のような島」と表現します。実際、ブルーサファイアやルビーなど世界有数の宝石産地で、古くから“宝石の島”と呼ばれてきました。イギリス王室のブルーサファイアもスリランカ産です。さらに、8つの世界遺産があります。シギリヤ・ロック、聖地キャンディ、ゴール旧市街など、2,500年以上の文明の歴史が今も息づいています。
 加えて、スリランカは生物多様性のホットスポットでもあります。哺乳類の16%、爬虫類の65%、両生類の90%が固有種という驚異的な数字です。26の国立公園を含む109の自然保護区があり、島全体が一つの大きな生態系の宝庫と言えます。

<インタビュアー>続いて、歴史について伺います。2,500年という長い歴史を持つ国ですね。

Gayan
はい。スリランカは世界最古の仏教国のひとつです。最初の王国、タンバパンニ王国は紀元前543年に建国されたと『マハーワンサ』に記されています。紀元前247年に仏教が伝来し、アヌラーダプラ王国は約1,400年の黄金期を迎えました。その間に、巨大な灌漑システムが築かれました。今見ても信じられないほど精緻な水管理技術です。仏教とともに、自然と共生する文明が発展しました。
 その後、南インドの侵略、ポルトガル、オランダ、イギリスの植民地支配を経て、1948年に平和的政治運動により独立しました。1972年に共和国となり、「スリランカ民主社会主義共和国」に改名されました。重要なのは、仏教文明が連綿と続いてきたことです。インドで仏教が衰退した後も、スリランカは上座部仏教の教義を守り、東南アジアへ広げました。タイやミャンマー、カンボジアの精神文化の基盤にはスリランカがあります。

<インタビュアー>スリランカのテロワールについて教えてください。

藤岡氏
スリランカの魅力は、島の中に多様な気候帯があることです。熱帯の湿潤地域、乾燥地域、標高800〜1,200mの中山間地。これらが組み合わさることで、スパイス、コーヒー、カカオ、ココナッツなど多様な農産物が育ちます。湿度、土壌、標高。これらがスパイスの成分含有量に直接影響します。例えば胡椒のピペリン含有量は、他産地の2〜3倍。テロワールが味を決定づけるのです。

自然の恵みの宝庫、スリランカの農産物とは?

それでは、スリランカの自然の恵みでもっとも特徴的な農産物をご紹介します。
① セイロンシナモン

藤岡氏
 セイロンシナモン(Cinnamomum verum)はEUのPGI認定を受けています。すべて手作業で収穫・加工されるプレミアムスパイスです。
 大きな違いはクマリン含有量。一般的なカシア種はクマリンが多く、過剰摂取で肝臓リスクが懸念されます。セイロンシナモンは極めて低含有。だからこそ毎日安心して使えます。
血糖値サポート、抗炎症作用、抗酸化。日本の機能性食品市場とも親和性が高い素材です。

② キトゥル

Gayan
 キトゥルはフィッシュテールパームの樹液から作られます。成熟に10〜15年。1日最大27リットルの樹液を煮詰めて作ります。この伝統的技術はユネスコ無形文化遺産です。低GI値(35)、ミネラル豊富、抗酸化作用。精製糖の代替として理想的です。
 水牛ヨーグルトにかけるキリパニは、スリランカ人の心の味です。

③ ペッパー

藤岡氏
 スリランカ産胡椒はピペリン含有量8.4〜11%。他産地の約2〜3倍、オレオレジン(精油成
分)含有量も世界最高水準(15~19.8%)です。この突出した品質を生むのは、スリランカ特有のテロワール、熱帯性気候、肥沃な土壌、高い湿度、そして標高800~1,200mの中山間地という栽培環境が、ピペリン生成に最適な条件を作り出しています。
 辛いだけではない。香り、うま味、薬効。標高と湿度がこの品質を生みます。

④ ココナッツ

Gayan
ココナッツは“命の木”。副産物まで活用するゼロウェイスト作物です。オイル、シュガー、ミルク・クリーム。粉と多様に使用してきました。電解質豊富で、ほぼ全量がスリランカ産です。なかでも「キングココナッツ」はスリランカ固有の飲料用椰子でココナッツウオーターのためだけに選抜・栽培されている希少種です。上品な甘味が特徴でスリランカでは路上の至る所で販売されている国民的飲料です。

カレーだけじゃない。スリランカの多彩な食文化

Gayan
スリランカは朝昼晩で異なる食文化、地域ごとの特色があり、ポルトガル・オランダ・イギリス統治時代の影響が融合した独自の食の世界があります。

藤岡氏
ホッパーは発酵米粉料理。日本の発酵文化と共通点があります。モルディブフィッシュは鰹節に似たうま味。日本人の舌に自然に馴染みます。

アーユルヴェーダと医食同源

Gayan
「アーユルヴェーダ」とは、サンスクリット語で「生命の科学」という意味です。5,000年以上の歴史を持つインド発祥の伝統医学で、紀元前3世紀に仏教とともにスリランカに伝来しました。スリランカは世界に先駆けてアーユルヴェーダ専門省庁を設置し、2,000年以上の伝統医学を国家の公衆衛生制度として統合している唯一の国です。日本でも古来より「医食同源」という哲学があり、日々の食事が心身の健康を作り病を予防するという基本的な考え方が共通しています。

スリランカの食を日本へ。

藤岡氏
日本のオーガニック市場は2028年に2,591億円。機能性表示食品は2026年に7,770億円。健康志向と透明性志向が高まっています。医薬品に頼らない健康食品など予防医療へのニーズが高いのが日本市場の特徴です。

Gayan
日本には発酵食品がありますが、スリランカもホッパー(発酵米粉)やアラック(ヤシ発酵酒)など発酵食品があります。また環境に配慮した製品やエシカルなどサスティナビリティへの関心も高く、スリランカは小規模農家や伝統農法を守ってきたことから、環境負荷の小さい農法を長らく実践してまいりました。料理の味に対する共通点もさることながら、基本的な考え方、ニーズが合致しており、スリランカの農産物は日本市場で受け入れられる親和性が高いと考えています。

スリランカは敗戦後、世界で最初に外交関係を樹立した国。

藤岡氏
 1951年、サンフランシスコ講和会議でソ連は「主権制限案」を提出し、これは独立後の日本に日本の再軍備の禁止・制限などの制約を課すものでしたが、当時のセイロン大蔵大臣である【J.R.ジャヤワルダナ】が「憎悪は憎悪によって消え去るものではなく、ただ愛によってのみ消え去るものである」というブッダが言ったとされる言葉を引用し、51カ国の前で演説。アジア諸国の立場として「日本は自由であるべき」と主張しました。その上で、セイロン(スリランカ)は対日賠償請求権を放棄すると宣言し、日本の独立と復興を支持しました。演説終了後、賞賛の声の嵐で会場の窓のガラスが割れんばかりだったと言われています。
 その結果、日本は主権制限のない独立を回復しました。そして1952年、世界で最初に日本と外交関係を樹立したのがスリランカです。


吉田茂首相は「スリランカへの恩を、日本人は未来永劫伝えなければならない」と語りました。

Gayan
私たちは歴史だけでなく今も、そしてこれからの未来も日本と共有したいと考えています。食文化の架け橋を築き、さまざまな面で日本との友好関係を構築するきっかけをつくるために、より一層スリランカの魅力を発信し続けてまいります。

<取材>

リージョングロースパートナーズ株式会社

Chief Strategic Officer Business Designer

中 田 晃 博(NAKATA Akihiro)

公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー 独立行政法人中小企業基盤整備機構四国本部マーケティングアドバイザー&スタートアップ支援チームメンバー

依頼主のありたき姿を可視化・言語化し、実装に向けたアイデアと全体戦略の構築が専門。株式会社電通西日本のプランナーとしてナショナルクライアントのコミュニケーション戦略立案やブランディング構築に従事した後、夢と志のある事業主やスタートアップを伴走型で支援するビジネスデザインファーム「funique」を設立しグロース支援を行っている。2024年、新たなステージとして「地域のために組織・人財・資金調達・運用・テクノロジー・コミュニケーションなど全領域で成長を支援」するビジネスモデルを構想し、同じ志を持つスペシャリスト達とRGPを設立。PGAツアーと阪神をこよなく愛し、試合を見ながら晩酌するのが至福の時。

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