埋もれた地域資源に、光を――王越の可能性を引き出す「小さな仕掛け」からの挑戦 株式会社ウエストフードプランニング 代表取締役 小西啓介氏

株式会社ウエストフードプランニング 代表取締役 小西啓介氏 サスティナビリティ
株式会社ウエストフードプランニング 代表取締役 小西啓介氏

「観光地として有名じゃないからこそ、できることがある」。
そう語るのは、香川県坂出市を拠点に食品製造業を展開する株式会社ウエストフードプランニングの代表取締役、小西啓介氏。香川県中小企業家同友会の代表理事も務める彼は、日頃から地域経済や企業支援に取り組むとともに、あるエリアに強く可能性を感じている──それが、高松市の西端に位置する“王越(おうごし)地区”だ。

王越での取り組みのきっかけ

自分の実家が坂出市林田地区にあり、かつての王越の風景をよく知っています。幼い頃に見た自然豊かなあの景色が、今では耕作放棄地になっていることに、正直寂しさを感じました。そこで、自分ができる範囲で何か貢献できないかと思い立ち、動き始めました。最初から大きな構想があったわけではなく、小さな活動を地道に積み重ねる中で、徐々に道が見えてきたというのが実感です。

高齢化率62%の現実と、観光資源化

王越の人口は約300人、高齢化率は62%。客観的に見れば“衰退地域”と括られてしまうエリアですが、私はそうは思っていません。たとえば、ツーリングやサイクリングの人たちが、あえてこの地を目指して来てくれるようになっている。その背景には、何もないからこそ感じられる“時間の贅沢さ”や“空間のゆとり”があります。観光地ではないからこそ、自分たちで意味をつくり、物語を紡げる場所だと感じています。

王越麦酒(ブルワリー)の創設

まちづくりを進める中で、王越を象徴するような取り組みをひとつ形にしたいと思い、立ち上げたのがクラフトビールのブルワリー『王越麦酒』です。旧王越出張所という公共施設の空き建物を活用し、地元のレモンを原材料にしたクラフトビールを醸造しています。このブルワリーを軸に、町にお金が落ちる循環をつくることが目的でした。

一番のポイントは、すべてを外部の専門家に任せるのではなく、地元の人たちと一緒に作っていくということ。ラベルのデザインや壁画のペイントも住民参加型で行い、まさに“共創”の形を実現しています。

農業・まちづくりの副次効果

クラフトビールは、単なる商品ではありません。農業と深い結びつきがあるものです。原材料として使っているレモンやみかんは、耕作放棄地の再生にもつながる資源ですし、そこに関わる人の雇用ややりがいにもなる。ビールをつくるという行為を通じて、農地が甦り、経済的な循環が生まれ、コミュニティが再び動き出す。そんな副次的な効果こそが、まちづくりにおいて重要だと考えています。

住民との関係構築と行政連携

まちづくりで最も大切にしているのは、地元の人と同じ目線に立つことです。外からのアイデアや資本だけで物事を進めようとすると、どうしても反発や距離が生まれがちです。だからこそ、まずは一緒に掃除をする、一緒にイベントを手伝う、そういう関係づくりが欠かせません。

また、行政とも対等な立場で理念を共有することが必要です。行政が全面に出ると住民の主体性が失われがちですが、逆に民間だけでも限界があります。役割分担をしながら、理念を共有し、持続可能な仕組みを一緒に考えていくことが重要です。

今後の展望:飲食・宿泊・クルーズ

今後は、王越麦酒を中心にした体験型の観光も検討しています。地元の人が作った料理を冷凍で提供する仕組みや、海を巡るクルーズの構想もあります。クルーズは、地元出身者とのつながりから生まれたアイデアで、自然の中での静かな体験を求める人たちにはぴったりのコンテンツだと思っています。

ただし、こうした構想も住民との対話を重ねながら、無理のないスピードで進めることが大切です。地域に根ざす活動である以上、“やりすぎ”は禁物。石橋を叩いて渡る姿勢で、一歩ずつ進めていきたいと考えています。

地域を変えるのは、大きなプロジェクトではなく、小さな行動の積み重ね

まちづくりというと、大きな施設や大規模なイベントを思い浮かべがちですが、本当に地域を変えるのは、小さな行動の積み重ねです。掃除をする、声をかける、集まって話す。そうした行為の中にこそ、地域の未来が生まれます。

インタビュアー

リージョングロースパートナーズ株式会社

co founder / Chief Human Resource Officer

Human Resource Director 大井啓一 (OI Keiichi)

キャリアコンサルタント(国家資格)

ギャラップ社認定ストレングスコーチ

人材戦略や採用戦略の構築と社員の強みを活かした組織づくりが専門。クリエーティブエージェンシーで「心に響く」TVCM・企業VP制作を経たのち、家具メーカーでプロダクト開発と特許を中心とした知財開発・取得などの業務で事業成長に貢献。その後、フードビジネスの国内外チェーン展開の企画開発や、それに伴う人事・広報部門の設立に携わり2019年に人財コンサルタント会社「tsutsuku」を創業。RGP社には自分の力だけでは踏み込めない新たな挑戦を求めて参画。趣味はサーフィン、カメラ収集、アウトドア、バイク、海外旅行など、多岐にわたる。誘われたら基本的には断らないスタンス。

コメント

タイトルとURLをコピーしました